2024/07/25

抗HIV薬DovatoとApretudeの新たなデータに関するViiV社の発表について

  •  Dovatoは3剤併用療法のBiktarvyと比較して、同等の抗ウイルス効果を示し、かつ体重増加の副作用が統計学的に有意に少なかった
  •  Apretudeの妊婦または妊娠への影響は、HIV予防の標準薬であるTruvadaと同等であることが示された

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、当社がGlaxoSmithKline plc.およびPfizer Inc.とともに資本参加しているViiV Healthcare Ltd.(以下「ViiV社」)による、抗HIV治療における経口2剤レジメンDovatoと、抗HIV予防における長時間作用型製剤Apretudeに関する新たなデータの、第25回国際エイズ学会(AIDS 2024)での発表について、お知らせいたします。

 

DovatoとBiktarvyを直接比較した、PASO DOBLE試験の結果について(ViiV社発表

本発表は、HIV-1の維持療法においてDovato(ドルテグラビル/ラミブジン)とBiktarvy(ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビル)の有効性と安全性を直接比較した、PASO DOBLE試験の結果となります。本試験では、ウイルス抑制されたHIV感染者の治療をDovatoまたはBiktarvyに切り替え、主要評価項目として、48週間の服用後のウイルス量の抑制を評価しています。また、主要な副次評価項目として体重の変化を評価しています。

 

 Dovato群は48週間後のウイルス量の抑制効果に関して、Biktarvy群に対して非劣性を示し、主要評価項目を達成しました。また、治療開始後48週目までに、Biktarvy群では1人のウイルス学的失敗が確認されましたが、Dovato群では確認されませんでした。主要な副次評価項目である体重の変化について、Dovato群はBiktarvy群と比較して体重増加の副作用が統計学的に有意に少ないことが確認されました。

体重の変化に関する試験結果

 

Dovato群

Biktarvy群

48週後の体重の調整平均変化

+0.89kg

+1.81kg

48週目に体重が5%以上増加した参加者の割合

20%

29.9%

 

 HIV治療において、体重の増加は重要なトピックであり、患者のQOLに大きな影響を与えます。本試験においてDovatoは、ウイルス抑制効果のみならず体重への影響という観点からも、HIV患者に対する有望な治療選択肢となることが示されました。

 

 

Apretudeの妊婦または妊娠への影響について(ViiV社発表

 本発表は、HPTN 084試験(Apretude(カボテグラビル)の安全性と有効性を評価する第Ⅲ相臨床試験)の参加者を対象に、Apretudeを継続的に提供することで、48週間のフォローアップを実施した、HPTN 084オープンラベルパートの結果となります。HPTN084試験において、ApretudeがHIV予防の標準薬である経口剤のTruvada(エムトリシタビン/テノホビル)と比較して、有意に優れたHIV予防効果を示すことが確認されており、HPTN 084オープンラベルパートは、長期間にわたるApretudeの安全性と有効性のデータを収集することを目的に実施されました。

 

Apretudeの妊婦および妊娠への影響は、Truvada群と同等であることが示されました。妊娠中にApretudeを使用したグループで有害事象発生率は100人/年あたり45.7%、妊娠前に使用したグループで47.1%、使用しなかったグループで37.5%でした。また、妊娠中にHIVに感染した女性はいませんでした。

 

妊娠後期および産後早期は、ホルモンの変化によりHIV感染のリスクが高まることが知られており、安全に使用できる予防薬が求められています。本試験の結果、Apretudeは妊婦および妊娠する可能性のある女性に対しても、有望な予防選択肢であることが示されました。

 

塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、HIV感染症をはじめとする三大感染症への取り組みを推進しております。今後も、60年以上におよぶ感染症領域における研究・開発で培ったノウハウを活用し、ViiV社と連携して事業を推進することで、HIV感染症治療と予防の両面でグローバルヘルスへの貢献を果たしてまいります。

 

本件が2025年3月期の連結業績予想に与える影響は軽微です。

 

以 上

 

 

 

Dovato (ドルテグラビル/ラミブジン)について

Dovato(日本での製品名:ドウベイト®)は、ドルテグラビル(DTG)50mgとラミブジン(3TC)300mgの1日1回投与の2剤レジメン配合剤です。 抗レトロウイルス治療歴がない、または、抗レトロウイルス療法によりウイルス抑制が維持され、DTGおよび3TCのいずれに対する薬剤耐性も認められない、HIV-1成人感染患者の治療を適応として承認されています。

Dovatoは、2剤でDTGベースの3剤レジメンと同様、2つの異なる部位でウイルスサイクルを阻害します。DTGのようなインテグラーゼ阻害剤は、ウイルスDNAがヒト免疫細胞(T細胞)の遺伝物質に組込みを阻害することにより、HIV複製を阻害します。このステップは、HIV複製サイクルにおいて必須であり、慢性感染の確立に関与します。3TCは、ウイルスRNAのDNAへの変換を阻害し、ウイルスの増殖を停止させる核酸系逆転写酵素阻害剤です。

 

Apretude(カボテグラビル)について

Apretudeは、HIV-1感染予防のための2か月に1回投与の注射製剤です。HIV陰性で、感染リスクが高い成人および12歳以上の青少年に対するHIV感染予防を適応として、承認されています。

カボテグラビルはインテグラーゼ阻害剤であり、HIVのDNAがヒト免疫細胞(T細胞)の遺伝物質に組み込まれるのを阻害することによって、HIVの複製を阻害します。このステップは、HIV複製サイクルにおいて必須であり、慢性感染の確立に関与します。Apretudeは、効果が長期間持続するため、患者が頻繁に薬を服用する必要がなく、QOL(生活の質)の向上に寄与します。臨床試験において、Apretudeは他の予防薬と比較して優れた有効性を示し、多くの参加者がApretudeを好むと報告しています1

 

HPTN 084試験(NCT03164564)について

HPTN 084試験は、HIV感染予防に対する有効性と安全性を、HIV感染リスクが高い女性3,200 名を対象に、2か月毎に投与するApretudeとエムトリシタビン(FTC)/テノホビル(TDF)の1日1回経口投与と比較評価するためにデザインされた第III 相二重盲検比較試験です。Apretude群は、対照薬のFTC/TDF群を89%(95%信頼区間:68-96%)上回る有意なHIV感染予防効果を示しました。HPTN 084 は、2017年11 月に登録開始され、計3,223名が登録されました。ボツワナ、ケニア、マラウイ、南アフリカ、エスワティニ、ウガンダ、ジンバブエの7か国20施設で実施されています。これらのサハラ以南の地域では女性のHIV感染率が高いことが知られています。試験デザインの詳細はhttps://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03164564 、試験結果の詳細は、2020年11月11日のプレスリリースをご覧ください。

 

参考:

1.       プレスリリース: 2021年12月21日
HIV 感染予防における世界初の長時間作用型注射剤 Apretude(カボテグラビル)の米国での承認取得に関するViiV社の発表について

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:

https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.